≪3≫

一方のクリスは、寝る時間になってもまだ興奮が冷めない様子。

クリス「今日の俺の雄姿を見た、アルベール!? 俺が剣を抜けば大男たちも震え上がった!
これぞ船長の器だ、そう思わないか? ティエラは俺が船長でもいいって言ってる!
きみがOKするなら、って――」
アルベール「人の上に立つ人間には、力だけでなく思慮深さも必要です。
きみが船長だなんて以ての外ですね」
クリス「そうやって、ずっと反対するつもりなんだな……」 アルベール「船の長になれば標的にされます。今でさえ悪目立ちしすぎている」
アルベールは、何故かクリスが海賊として目立ちすぎることをよく思っていない。

クリス「いつまでも子供扱い、アンリの気持ちが少し分かる」
と不機嫌顔のクリスを、
アルベールは寝かしつける。悪い夢にうなされないように……と。
クリスは言う、「覚えている、懐かしい色、この香り。いつも傍にきみの姿が」。
アルベールは言う、「ずっと共に。きみは親友、血を分けた兄弟、それよりも強い絆がある」。
安堵の表情でクリスが眠りにつくのを見届け――、

ティエラと2人、酒を酌み交わすアルベール。
2人の会話により語られる、クリスとアンリの出生の秘密。
それを知るのは、彼らを国から連れ出して救ったアルベールと、
彼らを匿い育ててくれた恩人の息子であるティエラだけ。
しかし、もし祖国を侵略した敵国が、クリス王子の存在を知ったら……。
クリスが悪目立ちすることをアルベールが警戒しているのは、それが理由なのであった。